2016年10月2日今月の銅版画~あの子どこの子「竜宮童子」
むかし、貧しい花売りが、売れ残りの花を海に捧げた。
そのことを甚く喜んだ竜宮の神が花売りをもてなし、土産にみすぼらしい童子をよこされた。
「おうちの隅に置いてやって下さい」
その童子が来てから、花売りの家はどんどん豊かになった。
美しく整った豊かな暮らしにすっかり慣れた頃、
みすぼらしい姿のままの童子のことが、鬱陶しくてならなくなった。
「もう海に帰っておくれ」
童子は鼻水を垂らしながら帰っていった。
すると花売りの家はみるみる貧しくなり、もとのあばら屋に戻っていたのだそうだ。(完)